パソコン向けの映像配信市場は、ブロードバンド環境の普及により着実に成長をとげるものの、成長ペースは現状の延長線上にとどまる。
非パソコン端末をプラットフォームとした映像配信サービスが立ち上がり、その普及が映像配信市場の成長を牽引する。
市場の定義映像配信市場を、インターネットやモバイルネットワークを通じた消費者向けの映像コンテンツの配信サービスの市場と定義する。
これは主に、エンドユーザーの映像配信サービスへの支払額と、スポンサーとなる企業が映像配信メディアに対して支払う広告・宣伝・販促費用からなる。
携帯電話端末を対象とした映像配信サービスは3Gネットワーク上で展開され、一定の普及が見られる。
ブロードバンド環境の世帯普及率は2008年度までに45%に達すると予想され、アクセスラインの家庭への普及には見通しが立ったといえる。
また、DVD並みの高品質の映像ストリーミング配信には光ファイバーなどの広帯域接続が必要とされるが、その普及率にも目処が立ちつつある。
また、大容量配信に不可欠なネットワークやサーバーの負荷分散・品質保証の技術や、配信ビジネスに不可欠のDRM(デジタル利用権管理)も、十分に実用のレベルに達しているといえる。
一方、非パソコン端末での映像視聴に関する開発動向も、2002年に入り活発化している。
現在のところ、映像配信の視聴端末となりうる家電製品の有力候補としては、ハードディスクレコーダー、デジタルテレビ、家庭用ゲーム機などがあげられる。
そのなかでも、ハードディスクレコーダーでは、家庭内LANで配信された映像コンテンツをストリーミング配信する機能を備えた機種や、ネット接続により番組表やおすすめコンテンツ表をダウンロードできる機能を備えた機種が登場してきており、家庭内のコンテンツサーバーとしての地位に現状で最も近い位置にいるといえよう。
また、デジタルテレビに関しては、国内の家電メーカー5社がデジタルテレビのネット接続機能の規格を共同で策定する動きがあり、今後が注目される。
家庭用ゲーム機ではPlayStationBBが本格的にサービスを開始する2003年が1つの区切りといえよう。
また、ソニーはプレイステーション2をベースとした新コンテンツプラットフォーム“PSX”を発表し、注目を集めている。
一方、パソコン陣営のインテルとマイクロソフトもパソコンのリビングルームへの進出を狙って独自に計画を進めている。
マイクロソフトはハードウェアレベルでリソースの厳密な管理を可能にする、Next-GenerationSecureComputingBaseと呼ばれる次世代パソコンアーキテクチャの構想を発表しており、次期デスクトップOS(コードネームLonghorn)での実装の開始を予告している(当初、マイクロソフトは、DRMの強化をアピールしていたが、構想発表後の世論を受け、ホームパソコン向けソリューションのロードマップを後退させている)。
映像配信は環境的、技術的には実用のレベルに達する見通しがほぼ立っており、その普及は、実現コストの問題に帰着されるといえよう。
残されたフロンティアは非パソコン端末にあるといってよいが、2003年から2004年にかけてのこのジャンルの製品をめぐる動きが、その後の映像配信市場の盛衰を決定づけると予想される。
<成長の踊り場に差しかかる映像配信市場>国内の映像配信市場は、ブロードバンド環境の普及によりパソコン向け配信サービスを中心に着実に成長をとげるものの、早晩成長の踊り場に差しかかると予想される。
一般にユーザーは5つの層に分かれるとされる。
このモデルに従うと、2002年の国内映像配信市場はその普及状況から、ちょうどイノベーターからアーリーアダプターに普及対象が移行する時期にあるといえよう。
これは、ADSLを中心としたブロードバンド環境の爆発的な普及により、映像配信がいわゆるテクノロジーマニアから、新しいサービス・技術をいち早く取り入れる比較的先進性のあるユーザー層へ普及が進みつつある現状によくあてはまるといえよう。
ここを取り込まなければ、新しいビジネスモデルの現在の配信市場自体が不正流通により創造が必要消尽する危険性このモデルによると、このまま普及が順調に進めば、2004年にはアーリーアダプターへの普及が終了し、普及対象はアーリーマジョリテイに移行すると予想される。
しかし、アーリーアダプターとアーリーマジョリテイでは、視聴環境や視聴コンテンツが大きく異なるため、市場のギャップが存在する。
すなわち、映像配信市場が2004年以降も引き続き成長していくためには、このギャップを乗り越えるために、現状の映像配信サービスの姿を大きく変え、アーリーマジョリテイの取り込みを図らなければならない。
そのためのカギは、先述の非パソコン端末の視聴環境や、提供コンテンツの種類である。
乱暴な言い方をすれば、アーリーマジョリティは、リビングのテレビでの視聴を好み、ハリウッド映画などの一般的なコンテンツを視聴対象としている。
また、現状のメディア並みの利便性が求められている。
また、映像配信のみならず、コンテンツ消費全体におけるユーザーのコンテンツ消費スタイルの変化も見逃せない。
たとえば、コンテンツを大量に蓄積しておきながら数回しか見ない視聴スタイルの浸透や、コンテンツそのものの寿命が短くなるといったコンテンツ消費のカジュアル化が進みつつある。
一方、配信市場を開拓してくれるはずの先進層では、インターネットを介したコンテンツの不正流通が浸透し、正規市場の発展を阻害している。
しかし、ユーザーが不正流通を行う理由は、単にコンテンツが無料で入手できるからではなく、むしろその利便性であり、彼らのニーズを満たしているからであるとの指摘もある。
コンテンツホルダー自らの映像配信への取り組みとしては、バンダイチヤンネルや東映特撮BBによる自社の過去コンテンツの配信があげられる。
特に、アニメのガンダムシリーズのオンデマンド配信は、インターネットの先進層とアニメ視聴層が一致したこともあり、多くのユーザーを集めた。
しかし、配信コストがいまだ収入に見合うレベルにまで低減されておらず、事業として十分な収益を上げるに至っていない。
勢い、すでに制作コストの回収が終わった過去コンテンツを活用するにとどまるのが現状である。
また、ホリプロや吉本興業などの有力芸能プロダクションが、独自にコンテンツ配信を展開している動きも注目される。
企業の映像配信の需要は着実に増加している。
たとえば、企業のIR活動、eラーニング、販促活動での利用が目立っている。
当面は、こういったニーズが映像配信需要を喚起するものと思われ、これらのサービス動向が注目される。
<接続サービスとのバンドルモデルの今後>YahooBBは自社の接続サービスユーザー向けに映像配信サービスを開始した。
また、複数の大手固定系キャリアもIPベースのオンデマンド映像配信サービスに乗り出す動きを見せている。
これらはパソコンではなく、一般テレビに接続されたセット・トップ・ボックス向けに対する映像配信サービスであり、今後の普及動向が注目される。
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